印鑑の書体の選び方

実印や銀行印などの印鑑に使われる書体は、日常的に使う文字とは異なります。
印章の歴史は古代メソポタミアまで遡るほど、非常に長い歴史がありますからね。
書体の種類が様々なのも、その歴史に基づいてもいます。
とはいえ当然用途に応じて向き不向きもあったりします。
また鈴印としてのオススメなどもありますので、それらを書体ごとに見ていきましょう。

個人向け印章具の書体とルーツ

印鑑に使われる書体を羅列すると以下になります。
「印相体・篆書体・古印体・隷書体・草書体・楷書体・行書体」の7書体。
ここに縦や横や派生が生まれ、かなりの種類になっていきます。
そしてその中からお店ごとにオススメの文字があり、次はそれらを個別にご紹介します。

印相体

複雑な雰囲気のため、実印や銀行印の書体で今一番人気なのが印相体

全ての線を枠に付け、別名吉相体などと呼ばれ「縁起が良いから」「隙間がなくたっぷり入っているから」「どっしりとして重みがあるから」などと言われ、縁起を担がれる方に人気。
ただ実は、印鑑に使われる文字の中で最も新しく、昭和50年頃に誕生しました。
その際に新聞広告等で「印鑑にも相があり、八方に運気が広がる縁起の良い書体」と広まり、それまで主流であった細くスッキリした印から、太くどっしりした文字がトレンドになっていきました。
この流れは現在も続き、篆書に関してもそれまでの細めから太めに移り変わりました。
新しい書体ということでネット等では賛否両論見受けられますが、鈴印としては肯定的に捉えています。
なぜなら全ての書体の中で一番自由度が高く、そのため個性が出しやすいからです。
デザインの性質上どんなお名前でもアレンジできるため、実印や銀行印の書体で迷ったら印相体、そんな判断でもよろしいくらいです。
またひらがなやカタカタであれば下記のSK印相体とならび、特にオススメ致します。

篆書体

凛とした高級感があり、実印や銀行印の書体で最も歴史があるのが篆書体

日本銀行券、いわゆるお札にも押してあるくらい権威ある書体です。
ちなみにお札の表には「総裁之印」裏には「発券局長之印」と彫ってあり、江戸後期の篆刻家「益田香遠(ますだこうえん)」が手掛ける。
詳しくはこちらのブログをご覧ください。
歴史と伝統、そんな言葉が篆書にはぴったり。
一流の職人技を味わいたければ、やはりこの篆書が一番です。
天地左右を枠に付け、枠を細く文字を太く彫るのが現在最も主流ですが、密かに枠が太くて線が細いクラシカルな細篆書も、一巡回って真新しさが満載です。
ちなみに印相体とどちらにするか迷った際は、実印の書体は篆書体がいいの?印相体がいいの?をご覧ください。

古印体

読みやすいのに重厚感があるため、認印に人気なのが古印体

隷書を基に、天地左右を枠に付け、印鑑専用として独自の発展を遂げたのが古印体です。
大宝律令で印章の使用が定められ、国之印や自社之印など多くの印が制作されてきました。長く土中に埋もれていたそれらが掘り出され、破損や腐食による思いがけない雅味を印人が見つけ、書画文人の印章に刻して発展させてきたのをルーツとします。
その欠けや墨溜まりなどの風合いが職人によって大きく異なり、また読みやすい雰囲気と相まって美しく仕上げるには相当な技量を必要とします。
読みやすいのに趣があり、認印として昔から人気です。
また人気ゆえに一般的でもあり、他者と区別する意味で斜めに入れて作るのもお洒落です。

隷書体

人とちょっと違う認印などに人気の隷書体

文字の歴史としては、篆書に次ぐ文字です。
秦の始皇帝時代、程バクという下級役人が獄中で10年間かかって三千文字位作り、許されたという俗説もあるが、基本は篆書を読みやすくした文字。
不思議と漢字は古いほど重厚感があり、格式高い雰囲気が味わえる。
またこちらも篆書同様、お札の金額や日本銀行券などの文字に使われいる由緒正しい文字。
ちなみに横幅が広い特徴から安定感があり、安定をイメージする銀行などのサインには隷書が多く使われています。
隷書は枠に付かないよう内側に配置するのが基本ルール。
またどの文字にも必ず1つだけ「波磔(はたく)」と呼ばれる主役の線があるのが隷書の特徴になり、印章製作においては丸い枠との兼ね合いに腕が問われます。
その特徴から印にした場合も、キリッとした雰囲気に仕上がります。

草書体

最も柔らかい雰囲気のため、昔から女性の銀行印や認印に人気

一般的に漢字の成り立ちの順番って、楷書→行書→草書だと思われていますが、実はちょっと変則的です。

  • 隷書→草書
  • 隷書→行書→楷書 ※厳密には行書と楷書に順番ははっきりしていないそうです

と、2つの流れによって現在に至るようです。
ちなみにひらがなはこの草書からできているため、文字の歴史の中でも重要な位置をしめる書体。
また草書の「草」は草稿などの「草」で、下書き等の意味もあるため、現在では実用場面ではあまり使われていません。
実用的でないことすなわち文化的。そんな理由から昔から印鑑としては人気の書体。
隷書同様、枠の内側に配置させるためすっきりと優しい雰囲気に仕上がります。
文字が持つ柔らかい美しさから、今でも女性用の銀行印や認印などに人気です。

小篆体

他にはない独特な柔らかい雰囲気で、落款風実印として女性のお名前の印に非常に人気

小篆(しょうてん)という書体は、秦の始皇帝が宰相李斯に命じて定めた漢字の紀元の文字で、当然この中で最も古い文字です。
私たち職人の世界では競技会などで使われる由緒正しき文字にも関わらず、あまり一般的でないのは彫刻に困難を極めるから。
そしてそれを実用印として、1990年頃から独自の解釈で提供し始めたのは先代、鈴木晴夫。
きっかけはお客様の声で「女の子なので、しなやかに女性らしく柔らかい書体で」というご要望だったそうです。
それまでは篆書や印相体に代表される重みのある雰囲気や、行書などの読みやすい書体しかなく、実印としてのご要望を満たすものではありませんでした。そこで晴夫は、落款に使用される小篆を実用印としてアレンジすることで、登録印としての重みと柔らかさを併せ持つ雰囲気を完成させました。

落款風実印のさらに詳しくはこちらから

これまではお名前もしくはお苗字だけの対応でしたが、今回新たにフルネームバージョンも誕生いたしました。
こちらも数年におよぶ試行錯誤の末完成した鈴印独自のレイアウトになり、性別も問わずにお使いいただける雰囲気が出来上がりました。

 

SK印相体

完全鈴印オリジナル書体で、あらゆる場面でスタイリッシュにご使用いただけます

他では作れないグラフィカルな書体を求める方にご好評いただいているSK印相体。
発想の原点は、友人のカケラデザイン、インスパイア系。
これまでの印章にはない直線的な構成でありながらも、ベースは鈴印の印相体を使用しているため登録印としても使えます。
元々はチタン専用として誕生した書体ですが、多くの方のご要望により現在は全ての素材に対応しています。
特に若い世代に全ての用途において人気です。

SK印相体のさらに詳しくはこちらから

 

書体の選択に迷ったら・・・

書体にはっきりとご希望があれば、ぜひその書体でお申し込みください。
それに合わせて最適な文字をセレクトし、レイアウトしながら判下を書き、彫っていくのが私たちの仕事です。

印相体か篆書体で迷ったら?

一番多いのは印相体か篆書で迷われるパターンですが、統計で見ると現在鈴印では印相体の方が人気です。
逆にご年配の方は篆書を好まれる方も多いため、おじいちゃんやおばあちゃんに見せるなら篆書が良いかもしれません。
また上記にも書きましたが、ブログにもまとめていますので参考に。
実印の書体は篆書体がいいの?印相体がいいの?

印相体かSK印相体で迷ったら?

店頭でも悩まれる方が結構多いのがこちら。
昔からある印相体と、スタイリッシュなSK印相体。
基本的には上記のサンプルをご覧になりながら直感で選ばれるのが一番かと思います。
またこれまで作ってきたイメージですが、雰囲気に重みがあるのが印相体で、おしゃれ感があるのがSK印相体です。
そのため象牙や水牛などは印相体、チタンやリアルブラックなどはSK印相体を選ばれる方が多いです。

SK印相体のどれかで迷ったら?

SK印相体にはⅠ・Ⅱ・Ⅲと種類があり、迷う方も多いようです。
当初のイメージは男性的なⅠ、女性的なⅡ、細字のⅢ、をイメージしていました。
ただ実際は性別問わず一番人気はⅡです。
確かに適度に直線と曲線が入り混じり、印章としてスタイリッシュかつ馴染みのある雰囲気はⅡ。
そのためもし迷った際は、Ⅱがオススメになります。

自分の名前がどの書体と相性が良いのか迷ったら?

これは考えても結論が出にくいお悩みです。
サイトによってはイメージビューなどが見られるようになっていますが、鈴印の場合は全て手書きのため対応致しておりません。
ただし、そんな方のために「書体おまかせ」をご用意しています。
お名前から、最適な書体とイメージチェック用の手書きの校正をご用意させていただきます。

そもそもどれが良いのか分からない?

とにかく迷った際は「書体おまかせ」をお選びください。
「こんな雰囲気希望」などご要望もあれば、備考欄にご記入ください。

私たちにあなたのイメージをお聞かせください。
それらの中から最適なデザインをご提案致します。