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お知らせ

印鑑の彫り直し(改刻)は、材料にひびが入る可能性がありますのでご注意下さい

象牙や水牛や石は彫り直しができます。

なんですが、お客様からお聞きするのが、彫り直しをしてくれるお店が非常に少ないそうです。
で、その理由を考えてみますと、万が一のリスクの回避だと思われます。

彫り直しをご希望される理由は様々。
大切な形見だから活用したい、もしくはせっかく材料代分安く作れるかも、などですね。
ただ彫り直しの場合って一番肝心なのは、彫り直しができる材料かできない材料かの目利きです。
これを見間違うと、彫り直したにも関わらず、最終的にヒビが入って使い物にならなくなってしまう場合もあるんです。
「えっ?あんなに硬いのに?」って思われるかもしれませんが、特に象牙に関してはこの現象が起こりやすいんです。
そのために店頭で目利きができない場合、リスク回避のために受けないと思われます。

 

彫り直しは切落とすのでなく、削り落とします

彫り直しって、彫刻面を切落とすと考えられる方が多いようです。
つまりノコギリのようなもので彫刻面を切断し、平らになった部分に新たに彫り直す。
実際に私自身もこの仕事に携わる前はそう思っていましたし、みなさまからの疑問からもそれが伺えます。

  • 全体的にどのくらい短くなるんですか?
  • 切り落とした部分だけいただけませんか?
  • 彫り直しって、首をハネるとかでよくないって言われたんですけど本当ですか?

この辺りの話をを総合すると、切落とすイメージの方が多いことが分かります。
正確に言えば、別途費用が掛かってしまいますが、切落とす対応もできないことはありません。
ただですね、時間も費用もかなり掛かってしまいますから、基本的に切り落としはあまりオススメしておりません。

そして実際にどうしているのか?
これは動画が一番分かりやすいので、そちらをご覧ください。

削っているのが分かると思います。
強い熱が加わらないよう、一気に削るのではなく、数ミリ単位で段階を追って少しづつ。
とは言え回数が多いとその分熱が加わりますので、時間を置いて再度削ったりなど、非常に時間と手間が掛かる繊細な作業です。

この削り落とすメリットは、どこを切るか目測の切り落としに対して、彫刻されている面が見えるため必要以上に削ってしまう心配がないことです。
彫刻した底って、手彫りの場合均一じゃないですから、その一番深いところまで止めるんですね。
それによって材料の長さも無駄にしないようにしています。

 

彫り直しの際に熱が加わって、ヒビが入る可能性があります

まず原因から申し上げますと、象牙などのカルシウムは熱の影響で膨張収縮するからです。
金属などの工業製品と違って天然材、つまり変化する物で、1番の要因が熱。
彫り直しって、思っている以上に熱が加わります。

  • 1.すでにある彫刻面を数回に渡って削る
  • 2.削った印面を平らに整える
  • 3.彫る
  • 4.さらに平に整える
  • 5.仕上げる
  • 6.バフで磨く

1.すでにある彫刻面を数回に渡って削る


かなり硬い素材でもある象牙を削りますからそれだけ負荷もかかり、実際にはかなり高温になります。
終わって取り出すときに触ると、軽く熱くなっているのがわかる程度です。

2.削った印面を平らに整える

ザラザラの削り面を平らにするために、サンドペーパーのようなもので番手を徐々に細かく何度も削ります。
そして平らになった後、彫っていきます。

3.彫る

ガリガリと力を入れて彫っていきますから、一刀一刀熱が加わっていきます。

4.さらに平らに整える

2と同じく、ぐりぐり擦り付け、回して整えるため、熱が加わり続けます。

5.仕上げる

削って整え仕上げる工程なので、比較的軽度ではありますが、熱は加わります。

6.バフで磨く

最後の仕上げなんですが、ここが最も熱が加わるポイント。
磨きますからね、どんな工程よりも熱くなります。
毎回

  • できれば最高に綺麗な状態でお渡ししたい
  • 汚れには多少は目をつぶってでもヒビが入らない方を優先する

の気持ちのせめぎ合いです。

これら全て、熱が加わる作業です。
それぞれの熱量は僅かではあるんですが、積み重なっていくとそれだけ印材にダメージを与えていきます。
その都度リスクが伴いますし、また強制的に冷やしてしまうのも逆に良くないので、様子を見ながら少しづつ作業していきます。
つまり印材に熱が加わって膨張し、冷める際に収縮を繰り返し、ヒビのリスクが連続するのが、彫り直しという作業なんです。

 

最後に

骨などと同じカルシウムである象牙は、水牛などと比べて遥かに熱に強いのは、人の骨が燃えないことでお分かりいただけると思います。
でも彫り直しされる印材の多くは、歴史を重ねたものです。
人の骨と同じように、新しいものよりは確実に劣化していることは間違いありません。
しかも普段はあまり使わずしまっておくのが印章ですから、古くて冷え切った状態から一気に熱が加わるため、どうしても弱い箇所がヒビ割れを起こしがち。
若くてキメの細かい牙なら柔軟性があって耐えられるんですが、古いものは何が起こるかの判断が非常に難しい。
そして私たちは長年の実績で、ある程度は予測することが可能です。
ただし絶対ではないことは、ご理解いただけますようお願いします。

参考に彫り直し可能なざっくりした基準をご紹介して、終わりにしたいと思います。

彫り直しが可能:鈴印でお買い求めいただいた印
最高品質=長期運用に耐え得るものしか扱ってないため
見せていただいてから判断:先代などが使われていた印
印章を大切にされる親御様などは良い印材を持っている場合が多いため、使用できる場合が多いため
お断りする場合が多い:中国などのお土産で安く購入したもの
総額などを考えると、水牛で新規で作られた方が安い場合が多いです

 

今回は特に象牙に関してまとめています。
彫り直しができる印材の種類については、以下をご覧ください。

【これで丸わかり】ハンコの彫り直しに関してまとめ