ここ最近はブログでご紹介しているせいか、はたまた時期的な物なのか、落款のご注文を多く頂いております。
落款印は、実印や銀行印等登録して個人情報の鍵として使う判ではなく、その方のサインやシンボルマークに近いモノ。なので快くブログでの掲載をOKして頂く事も多いんですね。
だから今回も無理言ってブログ掲載をお願いしちゃいました!
関防印
落款印にも種類があり、今回はご依頼の時点で「4文字熟語を彫ってもらいたい」とのご依頼でした。
先にその文字をご紹介しますと「感動伝人」
その言葉の意味や由来は後日の「鈴印の大切なお客様」でご紹介したいと思います。
本日はその彫刻課程のご紹介します。
落款には種類が色々ありますが、今回の様な内容はお名前を彫るのではなく、言葉。
つまり大きく分けると「遊印」というカテゴリーになるのですが
遊印(ゆういん)は、姓名や雅号、商号や屋号など特定の個人や法人に帰属しない文字を印文にした印章のことである。詞句印ともいう。文学や思想などを表現した語句が選ばれることが多く、篆刻家が好んで作印する。
なお、遊印に対立する印章を恒操印という。
Wikipediaより
その中でも4文字熟語を表したり、座右の銘を表す「関防印」のように縦長の落款でいこうと決めました。
関防印とは・・・
色々詳しく書いてありますが、簡単に考えると「座右の銘」でも構いません。
鈴印ブログより
関防印作業工程
そんなワケで作業工程をご紹介したいと思いますよ。
①印稿作成
まずはおおもとになる文字ですね。
これで作品のデキの約9割が決まる、といわれる位大切なモノ。
当然一発で決まるワケもなく、何度も何度もベストを目指し書きます。
せっかくなんで、どんな考えの元に書いていたのかをご紹介しますと、まず書いた順番はこんな感じでした。
①まずは横に2行で書いてみました。
この時点の印象は「何となく窮屈だな〜」って感じでした。枠に対して文字が大きいというか。「動」が画数が多すぎるかな〜。
②縦はどうかな?イメージだけだと分からないので今回は、縦にも書いてみました。
う〜ん、ちょっと窮屈すぎる・・・
③ここでは①の反省点を踏まえて「動」の文字を線の数の少ない文字に変え、目一杯にならないよう文字の間を開けて書いてみました。
・・・が、すっきりし過ぎてしょぼい感じになっちゃいました。
④ここでは①そして③の反省点を踏まえて作成。
すっきり・たっぷり・ゆったり・・・理想的な雰囲気になりましたね!そんなワケで完成
②実際のサイズで書きます
①の印稿は文字を空間の雰囲気を掴むために、書きやすいよう大きめに書いております。
なので次に原寸で書きます。
※ここで出来上がった文字を直接材料に転写するため、雁皮紙(がんぴし)と呼ばれる逆さまに転写できる紙に書きます
まず枠を書きます。
次に文字の下書きを鉛筆で書きます。
縦21ミリのサイズ感が分かるように、消しゴムを一緒に撮ってみました。
かなり細かいのがお分かり頂けますでしょうか?
で、下書きが終わったのがこちら
そしてここから筆で墨を入れます。
なかなか大変作業ですね。
この作業工程の中で一番大変なのがこの字入れ作業ですからね。
③転写します
②で書いた文字を材料に逆さまに転写します。
材料を完全に同じ位置に被せて、上から水を数滴たらし、上からこすりつけます。
すると雁皮紙が文字と共に張り付くので
丁寧に剥がします。
今回は若干薄めになっちゃったので、薄い部分は直接材料に書き足します。
④彫ります
今回の場合は、まずこんな感じで材料を篆刻台に挟みます。
そして歯医者さんが葉を削るような道具でざっくり彫ります。
※印材はイメージです
そして彫り上がったのがこちら
枠を残して朱色の部分を全て彫ります。
そして印面を再度削って極限まで平らにします。
表面に残った雁皮紙のかすや、重なった朱墨や墨を全て綺麗にして、材料がむき出しの状態にします。
仕上げ様に、再度墨を打ちます。
実際彫ると、結構太く残るんですよね。
なのでこちらを削ってベストな太さに持って行きます。それを「仕上げ」と呼びます。
参考ですがこちらが途中ですね。
え〜そして、すみません。
またしても集中してしまい、この後の行程の撮影をすっかり忘れてしまいました・・・
⑤仕上がり
しかし今回、完成品の掲載もご快諾頂けましたのでね、せっかくなのでご紹介します!
関防印「感動伝人」
こういった芸術性の高い作品は、その時々の気分やお客様の雰囲気、そしてイメージされる押すシチュエーションにかなり左右されます。
今回はとても詳しくそれらをお伝え頂きましたので、そのイメージの添うように仕上がったと思います。
そして落款を彫るときもいつも思うことは「その方が押した先が本当の役割」なんです。
はんこは彫って完成ではありません。使う方が押して、それが誰かの手に渡って初めて意味を成します。
だから「その方が押した先が本当の役割」
その方が押した落款によって評価が上がったら、それこそが我々の使命なのかもしれません。
「印鑑と通してあなたの価値を高めたい」
この企業理念には、そんな想いがこめられております。