日本ではこれまで、実印は成人の際に親から子へ贈られてきました。
そこには深い意味があったのです。

また2022年に成人年齢が18歳に引き下げられたことにより、成人の意味合いが以前と比べて複雑になってきました。
そのためこちらのブログでは、これから成人を迎えるであろうみなさまにお伝えします。
その意味を知ることは、ご自身の未来を守ることにもつながるからです。

成人になると責任が変わります

かつて成人になることは自由と引き換えに責任を伴うことでしたが、成人年齢の引き下げによって自由と責任のバランスが少々ややこしくなっているようです。

成人式が20歳だった頃は、お酒が飲めるようになったりタバコが吸えるようになったり、つまり自由がもっぱらの話題でした。
法改正によって18歳に引き下げられても、お酒やタバコは認めらませんが、責任だけは大人と同じように伴うようになります。
ここだけ切り取るとあまり良いことがないように感じてしまうのですが、実際の当事者はどうお思いなんでしょうか?
聞いてみたいですね。

では、成人になると具体的に何が変わるのか見ていきましょう。

民法が定めている成年年齢

成人、つまり成年は民法で明確に定められています。

【成年年齢】
・一人で契約をすることができる年齢

・父母の親権に服さなくなる年齢

成人すると、親の同意を得なくても自分の意思で様々な契約ができるようになります。
具体的には未成年の場合、携帯電話を契約する、一人暮らしの部屋を借りる、クレジットカードをつくる、高額な商品を購入したときにローンを組むといったときに親の同意が必要です。
これが成人になると、親の同意がなくてもこれらの契約が自分一人でできるようになります。
また親権に服さなくなるため、自分の住む場所、進学や就職などの進路なども自分の意思で決定できるようになります。

そしてこの中でも特に重要な点は、親の同意がなくても契約が成立することです。
実印を必要とするような高額な契約にも、責任が伴うようになります。
未成年であれば親の同意が必要なので、後から「未成年者取消権」によって取り消すことができます。
ところが成人になると、実印を押す全責任を伴うようになります。

デジタル時代でも実印が必要なの?

最近のデジタル技術の進歩によって、電子契約やデジタル署名が普及してきています。
しかしこれらは主に簡易契約に適しており、重要な契約では実印の必要性は依然として存在します。
これは、実印が本人の意思を明確に示す唯一の手段であるためです。

ただの本人確認ではなく、明確に本人の意思がそこにあることを証明するのに、日本においてはやはり実印が最適です。
長い年月をかけて確立してきた実印という制度は、その都度アップデートを繰り返し、最適化しながら今日にたどり着いているわけです。
やはりこれは日本語、つまり漢字との親和性を考えた上で成立してきた1つの成果ですので、簡単に切り替えることが難しいのが事実です。

実印の重要性

実印を捺す時は、あなたの人生を左右するほどの大きな決断を迫られる時です。
ちなみに実印を捺す場面は、車や家や土地などの高額商品を購入する際になります。
昨今メディアでハンコは不要なんて言葉が飛び交っていますが、それは100円で買えるような簡単な三文判の話であって、実印とは異なります。
その違いは印鑑登録の有無にあります。

では次に日本の契約の仕組みと印鑑登録についてご説明しますね。
ちょっとややこしい部分もありますが、あなたの権利を守ることにもなりますので、ぜひご一読ください。

日本の契約の仕組みと印鑑登録

日本の契約の仕組み

日本の契約は、お互い契約書に実印を捺し、捺した印鑑の証明書を添付することで成立します。
1対1の約束は、どちらかが言った言わないになると困りますよね?
そのため第三者が必要になりますが、その役割を公的機関である役所が行い、印鑑証明書という形で確認と認証が含まれます。

印鑑登録

印鑑証明書を発行してもらうには、まずあなたが作った印鑑を役所に印鑑登録し、実印にする必要があります。
登録する際には本人であることを確認できる書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカード(個人番号カード)、顔写真付き住民基本台帳カード、特別永住者証明書、在留カード、健康保険証など)を持って、あなたの住民基本台帳がある役所に行きます。

ここで勘違いされやすいのが、実印についてです。
自分で「実印」だと思っているのが実印ではなく、役所に印鑑登録した印章が実印になります。

印鑑登録をすると印鑑カードが発行され、印鑑カードを使ってプリントするのが印鑑証明書です。
ちなみに最近ではマイナンバーカードがあればコンビニなどでも取得できる印鑑証明書ですが、ない場合でも役所に行けば取得することができます。

このようにちょっと面倒な複数の登録を行うことで、契約であなたの意思を証明する仕組みが日本の契約になります。
よくサインじゃダメなのか?の意見もありますが、サイン契約には第三者として公証のサインをする公証人が必要ですが、日本には約500人ほどしかいないため、圧倒的に数が足りず契約が滞ってしまいます。

このように日本で本人であることの証明を確定するには、今も実印と印鑑証明書以外には手段がないんですね。
そのために日本の契約においては、実印が必要になるんです。

なぜ実印は成人の際に、親から子へ送られてきたのか

実印を作るタイミングで上位に来るのが、車の購入・成人・新社会人になります。

ちなみに鈴印には「実印は親に作ってもらったんで私も」と、成人のお祝いとして作りにこられる方が多いです。
その際に色々とお話をするのですが、私自身も色々と教えていただくことも多く、ある傾向が見えてきました。

実印をなぜお子様に贈るのか?
一言でまとめるなら、お守りです。

契約は千差万別。
自分の望む欲しいものを購入する契約だけでなく、予想もしていなかった保証人など、望まない契約もあります。
望む契約でも、もしかすると払いきれなくなってしまうことも考えられます。
望まない契約なら尚更、1つの捺印で人生が180°変わってしまいます。
だから捺印は慎重に行う必要があるんです。
捺印=決断。
そのため決断の際のお守りとして、捺しにくいほどの立派な実印をお子様にプレゼントされていたんです。

それを学んでから私たちは、親から子へ贈られる際には以下のメッセージをお渡ししています。

ご存知でしょうか?
実印は親から子への贈り物です。
なぜなら親御様からプレゼントされた実印は、押す時必ず送り主の顔が浮かぶからです。
実印を押す瞬間は人生の中で、最も大きな節目です。
その一生忘れられない大切な一瞬から、豊かな人生がはじまります。
しかし一方で保証人のような誤った捺印をしてしまうと、真逆の運命を辿ってしまいます。
つまり、実印を押すという行為は、その後の人生を決めるほどの重要なタイミングでもあるのです。
実印は親から子への贈り物。
その言葉に隠された本当の意味は、親から子への最上の愛です。
ある方はこのようにおっしゃいました。
「私は実印を贈る際、3つの想いを込めました。責任、自覚、そして親の愛です。いつまで経っても子供は子供です。心配なんです。でもいつまでもついている訳にはいきません。だから大切な子供たちの人生を守るために、私は実印を贈りました。」
この贈り物には、そんな親御様の大きな愛が込められています。
この世で一番大切なあなたのために。

最後に

成人になることは、人生の大きな転換点です。
これまでは目に見えないところで親が守ってくれたことを、これからは自分自身で決断し、その責任を負うことになります。
実印の捺印は、そんな人生の大切な瞬間において、自分の意思と決断を象徴するものです。
だからこそ実印は、親から子へ贈られてきました。

実印を捺す重要な局面では迷うこともあるかもしれませんが、そんな時こそ実印を見ながら贈ってくれた親御様の顔を思い出し、自信を持って前に進んでください。

それでも迷う場合は、親御様に直接連絡してみてください。
必ずあなたの人生にとって、最適な回答が得られるはずです。

なぜなら実印をプレゼントする人は、あなたの人生を一番大切に考えてくれている人だからです。