意外と知らない象牙にまつわる真実のお話

 

突然ですが「はんこの最高級品」と聞いて、真っ先に何を思い浮かべますか?
多分多くの方々は「象牙」が頭をよぎると思います。
最近はチタンやカーボンなどさらに丈夫で魅力的な素材も増えてきましたが、やはり昔から歴史と伝統のある象牙は、彫り手としても別格な認識があります。にも関わらずこれまで自分の中で当たり前すぎて、その魅力をお伝えする機会があまりありませんでした。またここ最近は、その象牙に対する世の中の意識が多少変わってきたと感じます。そのため、改めてこの場をお借りしてお伝えしたいと思います。

 

【日本国内の象牙は、象の密猟とは関係がない】

新聞等で目にするのは象牙の密輸に関する問題ですが、これは国内の象牙所有者がワシントン条約に違反して国外に持ち出そうとしているためです。日本国内では厳重に管理されている象牙ですから、売買するためには非常に厳しいルールにのっとる必要があります。私たちは経済産業省に「特別国際種事業者」として登録し国の認可を得て、1本1本全て管理し販売しています。また世界的にも流通が制限されている昨今ですから、法の目をかいくぐって国外に販売しようとする人が出てきてしまうんですね。以上から分かることは、違法の問題はあくまで過去に合法的に入手した自分の手持ちの象牙を、現在海外に持ち出そうとする場合のみであることです。ちなみに日本の管理は極めて優秀ですから、日本での象牙の需要がアフリカゾウの密猟と関係が無いことはワシントン条約の会議でも認知されています。
つまり現在私たちが入手できる象牙は、ワシントン条約後の正常な国際取引を経て輸入されたものか、もしくはそれ以前の象牙になります。なお、ワシントン条約で象牙の国際取引が禁止になった後も、1999年、2009年には、ワシントン条約の決議により輸入されています。ちなみに、その過去2回の取引によって得られた収益は、条約のルールに基づいて、“全て”アフリカゾウの保全と、生息地や地域住民の開発計画のためにのみ使われています。

 

【象牙の正常な国際取引が象の保護につながる】

ネット等で目にするのは、象がかわいそうだから象牙を買わないといった意見です。
ただここには大きな誤解があります。結論から言えば、象の正常な取引が安定的に行われたいないために密猟が起こってしまっているのが現状です。象が生息するアフリカ等の現地の人々にとって象は害獣と言われています。象は巨大で群れ、また人の生息地と棲み分ける意識もありませんから、食料がなくなると村の木をなぎ倒し田んぼや畑の作物を根こそぎ食べ尽くします。以前は、現地の人々は自分たちの身を守るために象を倒していました。またその後は肉を食し、象牙や象皮は輸出されました。正常な取引で得た外貨で象の生息地を潤し、人との境界線を作ることに役立てました。ところが現在はワシントン条約の規制のために象牙を売って外貨を獲得することができず、整備ができなくなっています。ワシントン条約で象牙の国際取引が規制されているため、国内の象牙だけで足りないような場合には、買い取るために現地の人を雇って違法に象牙を採らせるような国も表れています。つまり、象そして現地の人々の生活を守るためには、正規ルートをもって正常な取引を再開し、安定的にそのバランスがきちんと回ることしかないと有識者は言います。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mammalianscience/51/1/51_1_119/_pdf

 

【全ては命への敬意と感謝】

人間は動物や草木の命をいただくことで生命活動を維持しています。私たち日本人は、その命への敬意を他の誰よりも大切にしてきました。例を挙げるなら、鯨の骨や髭までも浄瑠璃の人形の部品に使うなどし全てを活用しました。魚も骨以外は綺麗に食べる、また骨すらも料理して食す文化もあります。つまり他の命で自分たちが成り立っていることを誰よりも知り、だからこそとても大切にしてきました。
象牙がなぜ昔から最高級品と呼ばれるのか。それは印章の素材として最適なだけでなく、命に関わる全ての人々の想いがそこに宿っていたからなのです。象の命に感謝し、丁寧に選別しながら切り分け印材に加工し、一流の職人が魂を込めて彫刻し、みなさまの手元に渡り、長きに渡り大切にご使用されてきたのです。だから私たちは、その文化を守り伝える使命があるのです。