手書き

どこまでが無料で、どこからが有料なのか?

モノを作る仕事をしている人は、多かれ少なかれ直面する問題だと思うんですが、以下のブログが目に入りました。
そこにはこんな内容が書かれていました。

英語圏でのデザイン業界ではspeculative work、略してspec work(スペックワーク)という言葉があります。これは支払いが未確定な仕事、もっと言えばタダ働きの可能性が濃厚な仕事という意味で、特にデザインコンペに対してよく使われる言葉です。

コンペのタダ働き問題より抜粋

ここ最近私も頭を悩ませるテーマでもありましたので、取り上げてみたいと思います。
2015年12月14日に書いたブログですが、2019年6月6日にリライトしました。

どこからが有料でどこまでが無料なのか

私たち印章彫刻師も文字のデザインから始める点ではデザイナーさんと一緒だと思っているんですが、ハンコを彫る前に書く設計図があり、これを書くのは有料なのか、無料なのか。
鈴印ではこの設計図(版下)は「1回まで無料」とさせていただいてます。ただし、ご注文が確定した時点からの着手になります。
これはプロが文字を書く時点でそれは仕事になり、費用が発生するという考えからです。
実際鈴印の版下は私が書いてますから中には「そんな固いこと言うなよ」って方もたまにいますけど、仮に私が書けなかったら誰かにお願いして書いてもらうようになるので、その場合は料金が発生しちゃいますよね?
なので、とりあえずでは書けない。
サンプルをご覧いただいて打ち合わせの段階では無料ですが、作業に取り掛かる時点で有料。
つまり、すべての制作作業が商品代金に含まれているって考えですね。

また中にはこんなご要望もあります。それは
「実際どうなるか見てみないと頼めない」
確かにそうなんですよね。
そのため店頭において簡単なスケッチであれば打ち合わせの段階でご覧いただきますし、またネットからのご注文の際も1回までは無料です。
無料の理由として、全ての印章制作において必ず1度この文字デザインを描き起こすからなんです。
印章って逆さまに彫りますから、最初に正しい向きで書いた方が、より緻密に正確な印章作成に繋がります。
そしてそれをご覧いただくのが、鈴印のイメージチェックです。
そう言う意味では、工程の一部を共有していただくのに近いのかもしれません。
だから1回までは無料となります。

デザイナーさんの世界ではどうなのか?

では改めて、冒頭にリンクを見ていきたいと思います。

英語圏でのデザイン業界ではspeculative work、略してspec work(スペックワーク)という言葉があります。これは支払いが未確定な仕事、もっと言えばタダ働きの可能性が濃厚な仕事という意味で、特にデザインコンペに対してよく使われる言葉です。

コンペのタダ働き問題より抜粋

デザイナーさんの世界ではスッペクワークというそうですね。
クライアントがいて、何人なのデザイナーに作らせ、その中で一番イメージに近いモノを選ぶ。
やっぱ選ばれなかった人の手間はどうなんだ?って思っちゃいますよね。
以下の説明が分かりやすかったです。

それでは何故これが間違っているか、また別の例で説明します。あなたはお腹が減っています。そこでいろんなシェフに声をかけて料理を作ってもらい、一番満足させてくれた人だけにお金を払い、他の人たちには帰ってもらいます。あるいはスーツの仕立てでも何でも構いません。要するに参加者のほぼ全員にタダ働きを依頼していることが問題なのです。デザインだとあまり気付かないかもしれませんが、他の業種に置き換えると分かりやすいと思います。

また「実際どうなるか見てみないと頼めない」というご要望に関しても、こんな明快な回答がありました。

「作品が存在する前から支払いを確定させなきゃいけないなんて、どうすれば良いの?」と思うかもしれませんが、だからこそプロに仕事を依頼するのです。ウェブサイトを見るなりポートフォリオを募集したり人づてに紹介してもらうなり、デザイン年鑑などを見て気に入ったデザイナーを見つけるなり、選定する方法はいくらでもあります(ドイツの有名なデザイナーであるエリック・シュピーカーマンは「調べ物ぐらいやれ。世間ではそれは仕事と呼ぶんだ」と言ってました)。アイデアの数が欲しければ、ニーズをちゃんと理解している一人の人間からでも十分な数を引き出すことができます。

最後に

どこの世界でも同じような問題が起こっていて興味深く拝見しました。
なんか日頃思っていたモヤモヤが一気に晴れた気分です。
そして最後にこれを引用したいと思います。

次に、アイデアがたくさん集められるからといって、すべてがいいアイデアとは限りませんし、オリジナルであるとも限りません。参加者が意識しているか否かに関わらず、コンペは参加作品の質を下げます。期待値が低いことから、参加者は基本的にタダ働きになる前提で作業することになります。プロのデザイナーならば本来同じ作業で確実に収入を得られるため、よほどの理由がない限りコンペには参加しません(賞金が見合っているか、それ以外の価値を見出せるか)。まともに参加コストを計算できる人間ならば誰でも節約しようとします。どう労力を節約するかというと、過去の自分のアイデア、ひどい場合は他人のそれを流用(つまりパクリ)するわけです。コンペに日常的に参加している人間ほど参加コストの問題は大きいのでパクリが常態化するでしょう。そうでなくとも「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」タイプのデザイナーを長期的に増やすだけです。

やっぱ作り手って、クライアントからの想いが一番のエネルギーになります。

「あなたの作品に惚れたから、あなたにお願いしたいんです!」

本気で依頼されたら作り手も本気になっちゃいます。
職人をその気にさせるのって、実はとっても簡単なんです♡

 

 

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