「今度会社を興すんですけど、ある方に『会社の実印は別に個人の印鑑でも大丈夫なんだよ』って言われたんですけどどうなんですか?」
実際法的には問題ありません。
「でもやはり個人の実印と会社の実印は分けた方が安心ですよ。」とお話しています。
確かに創業の際は費用がかなり掛かりますからね。
できるだけ安く済ませる方法をご指導される方も多くいらっしゃいます。
登記における他の部分は私は専門外なので、印鑑にまつわる部分でのお話をしたいと思います。
印鑑を分ける一番の意味はリスクの分散です
個人の実印を三文判で登録され、法人登記もそのまま同じ三文判で登記される。
1本で済むから安上がり!
確かにこれなら全ての登録印が下手したら100円で済みます。
ではそれだとどんなリスクがあるのか?
私は印鑑は究極の個人情報、つまりパソコン等のパスワードと似ていると考えております。
法人登記されると想像以上に捺印する頻度は増えます。つまりアカウントが増える事と似てますね。
そしてその1つ1つに責任が発生します。押す頻度が増えるという事は、それだけ悪用されるリスクも増えるワケです。
アカウント乗っ取りが分かりやすい例かもしれません。
つまりどこでも入手できる三文判は、パスワード12345と同じく、万が一狙われた時に全ての情報を盗まれてしまいます。
そんな理由から用途によって印鑑を複数用意しそれぞれに役割を変え、それをきちんとアナログ的に管理する方法(実印・銀行印・認印・角印等)が実は面倒でも、強固なセキュリティを保つことになるんですね。
個人の実印は財産を守るモノ、会社の実印は財産を作るモノ
そもそも個人の実印と、会社の実印は目的が異なります。
個人の実印は決して頻度の高いモノではありません。なぜなら財産を守るためのモノだからです。
もし仮に個人の実印を押す機会が増えればそれは当然法人化されますし、あくまで個人の実印はしょちゅう押さないような社会の仕組みになっています。
「この家は自分のモノである」と自分の権利が侵されないよう主張する、つまり財産を守るモノが個人の実印の一番の役割です。
対して会社の実印は、財産を作るモノです。
こちらは逆に実印を押さなければ何も進みません。実印を押さない=会社が大きくなっていない事を意味しますからね。
押す事によってリスクも発生しますが、そのリスクを恐れて何もしなければ会社はいずれ消滅してしまいます。
会社の実印はそれを押す事によって事業を拡大させる、つまり財産を作る事が会社の実印の一番の役割になります。
その相反する役割を1本で担うのはやはりリスク回避という意味では心もとないですし、仕事柄様々な創業者の方を拝見してますが、やはり成功される方の共通点は印鑑を大切にされる方が多いことですね。
長く使うモノを安く済ますと後で高くつく
これは親父の名言だと思っております。
短期間で取り替えるモノであればそれこそ費用を削っても後々どうにでもなりますが、長く使うモノは必ずしも初期投資が安い=お得ではありません。
例えばものすごく古い中古車を安く手に入れても、部品調達だ修理だなんだで結局安くは済みませんし、燃費だって税金だって高くなりますからね。決してお得ではない。
法人で使う実印も似ています。
最初は安く済ませても、後々一番大変な登録印の改印手続きが待っています。
三文判は耐久性を考えて作られてはおりません。なので法人印として毎日のように押していたら一年は持ちません。
だから必ず作り替えるようになります。しかもそれまでに済んだ契約を追って改印手続きしなければなりません。
その都度印鑑証明書や全部履行証明書が必要になりますし、その度に法務局に足を運ぶ時間のロスも発生します。
そして当然作り直した実印の費用も余計に発生しますしね。
つまり最初の段階でしっかりした実印をご用意された方が、結果一番コストが掛からずに済みます。
まとめ
ハンコを押す行為は面倒と感じられる方も多いかもしれません。
でもそれはパスワードと一緒で、面倒だからこそセキュリティが保たれているのです。
パスワードもそうですが、実印の役割は財産の管理です。
とりあえず面倒だから簡単に済ませてしまうと、後々大変な思いをしてしまいます。
パスワードだって乗っ取られてから替えたんじゃ遅いですよね?自分だけならいざ知らず、周りの大切な方々に迷惑をかけてしまいますから。
実印も問題が起こってからの対処では遅いんです。
会社の実印は、投資です。
あなたの会社の財産を守り、そして作るための大切な分身なのですから。