手彫り

刃物を選ぶのも技術の1つ

みなさんも生活する上で、何らかの刃物をお使いですね。
例えばはさみだったり、カッターだったり、包丁だったり・・・
その刃物には切れ味があります。
買ったばっかりはよく切れるけど、使っている内に切れ味が悪くなる。
気にしない方はそれほど気にならないかもしれませんが、気になる方は凄く気になるのが切れ味。
例えば私自身はほとんどこだわりというか関心すらない包丁も、料理好きな奥様はとても気になる。

そんな私でも1つだけとてもこだわっている刃物があります。
それはハンコを彫るための刃物。
なぜならその切れ味で、仕上がりに大きく差が出ちゃいますからね。
だからこのハンコを彫るための刃物はものすごく大切にしてますし、またこだわりを持っています。

刃物の切れ味には当たりハズレがあります

印刀&判差し

現在使用しているのは、全部で16本になります。
一見同じように見えますけど、それぞれに特徴が異なり用途に応じて使い分けます。
そしてこれもまた当たり外れがあって、個人的には硬いのが当たりで、柔らかいのがハズレという認識です。

もちろんお店で「硬い」「柔ない」なんて記載はありません。
あ、私がよく購入していたお店ではの話ですが。
だから見た目じゃ分かりませんので、選ぶのも熟練の技が必要になります。
私が先輩と一緒に買いに行って最初に教わったのは、机の角とかに軽く当ててキーンってなる音によって判断する方法。
硬いほど高音で、柔らかいと低音でした。

ちなみに私たちの道具は全部自分で研ぐんですけど、当たりの刃物は簡単にへたらず長持ちしますし、何より彫っていて安定感があります。
なんですけど、硬いから研ぐのが大変。
だから研げるようになるまでに果てしない時間がかかりましたけど、一度研げるようになると長く使い続けられる最強の武器に仕上がります。
逆にハズレは、驚くほど研ぎやすい。
だけどあっという間に切れ味が落ちます。
例えば象牙とか堅い材料を彫ると1本で切れなくなり、研ぎ直しになります。

当たりの刃物は腕をもあげる

他の業界でも一緒なんですかね?ハンコの刃物は古い方が当たりが多いんです。
勝手に予測するなら昔の方が手彫りの職人さんが多く需要も多かった、というコトは需要も多くて作る方も上手だったんでしょうか?

いずれにしてもそんな理由から、密かに象牙など堅い材料を彫る時は、親父にもらった刃物を使っています。
私と一緒に仕事をするようになってから親父はあまり彫らなったので、無理言って使ってないのを譲ってもらいました。
これが驚くほど硬くて、最初は「どうやって研ぐの?」って感じだったんですけど、徐々にコツをつかみ研ぎあがった後はまさに最強。
それまで象牙は1本彫っては研いでを繰り返していましたが、それ以降はバンバン彫れるようになりました。
この安心って非常に大切で、これ彫ったらまた研ぐのか?って考えながら彫るより、気にせず彫れるだけで作業に集中できます。
そして何より当たりの刃物は使っていて楽しい。
気持ちよく切れ、気持ちよく削れますから、楽しくて仕方がないんです。
「あー切れ味悪いな、これ」って思いながら彫るよりも「うわっ、切れるな!楽しいな!」って感じながら彫る方が、より出来上がりに差が出るのは火を見るより明らかです。

つまり当たりの刃物は、腕をもあげるんです。

 

 

最後に

親父の印刀&判差し

鈴印店頭の一角に落款コーナーを用意し、そこには刃物が飾ってあります。
それは親父が使っていた刃物です。
親父が使っていた物をただそのまま移動させただけ。
だから彫りカスとかも当時のまま。

上にも述べましたように、親父が使っていた一部は私に譲ってもらっていますから、ここにあるのはその残り。
1つだけ気になっていることがあります。
ここに残っている刃物は果たして、当たりなのかハズレなのか?
まあ案外良いものから惜しみなく譲ってくれる親父でしたから、きっとここにあるものたちは、私が使うそれらより劣るのかもしれません。
いずれ将来今の刃物が使えなくなる時が来ますから、その時が楽しみでもあり不安でもあり♡

刃物を選ぶのも技術の1つです。
そしてその技術もまた、代々継承し続けるものだったりもします。

 

 

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