ここではみなさん気になる、手彫りと機械彫りの簡単な見分け方を解説します。
私たち印章彫刻士は、印面のいくつかを確認することで、手彫りか機械彫りかを見分けています。
そのノウハウを今回特別にご紹介します。
またそれぞれの彫刻する様子も併せてご紹介しますので、イメージしやすいかと思います。
もしご自身の印章がどちらか気になるのであれば、ぜひ参考にしてください。
※2013年2月23日に公開したブログですが、リライトに必要な文言等を追記、その他の部分も修正して2022年1月17日に再度公開しました。
手彫りと機械彫りの簡単な見分け方
左が手彫りで、右が機械彫り
比較しやすいように、全く同じ直径で、どちらも同じく「鈴木延之」と彫刻しています。
最初に結論から申し上げます。
【手彫りと機械彫りの見分け方】
印面の底を見てください
次にそれぞれ拡大した画像で細かく見ていきます。
手彫りの底面
- 底が凸凹している
- 底と文字間の深さがほぼ同じ
機械彫りの底面
- 底が平ら
- 底と文字間の深さが異なる
他にもいろいろポイントはありますが、今回はまず底の部分だけを見てください。
比較的簡単に見分けられることがわかると思います。
では次に、なぜ手彫りと機械彫りで底が違ってくるのかを、彫刻方法と共にご説明します。
手彫りと機械彫りで底面が変わる理由
手彫りの彫刻方法
かなり前に違う目的で撮った動画ですが、30秒あたりからご覧ください。
底面が凸凹になる理由は、このようにゴリゴリと刃物の「面」で彫り込んでいくからです。
上記が彫り込むための刃物「印刀」ですが、広い部分は右の幅の広い印刀を使用します。
つまり幅=面で彫るため、「チリ目」と呼ばれる凹凸ができるんですね。
また底面の深さが均一な理由ですが、一言で言ってしまうと「均一に彫っているから」なんです。
同じ深さに彫ってある方が見た目も美しいですし、長く使っていて目詰まりがしにくい。
また文字デザインの段階で、部分的に窮屈にならないように文字間を広めに調整しているので、同じ深さで刃物が入ることになります。
印刀の種類が多いのは、幅が違うから。
彫る空間に応じて、幅広から薄歯までを使い分けて均等に、手彫りならではの証を刻んでいきます。
機械彫りの彫刻方法
その名の通り、彫刻機で彫っていきます。 鈴印でも三文判に限り機械彫りを行っていますので、まずはそちらの動画をご覧ください。
機械で彫る場合、歯医者さんのような先の尖ったピンを使って彫ります。
ピン先が回転し、移動して彫るため、均等な深さで平らになります。
深さに差が出るのは、ピンの太さと関係します。
ピン先は鉛筆のような形状ですから、狭い部分を同じ深さに彫ると文字が細く削れてしまいます。
そのため文字を削り込まないように浅く制御、つまり深さで太さを調整するため、このように段差ができるんですね。
最後に
今回は違いをわかりやすくするために、「手書き+手彫り」と、「PCフォント+機械彫り」という区分けでお話ししました。
厳密にはこの中間に「手仕上げ」という手法もあります。
手仕上げは「PCフォント+機械彫り」をした後に、刃物を使って削って整える彫り方です。
そのため手仕上げの場合でも、底面は機械彫りと同じく平らな場合も多いです。
聞くところによると、枠だけ刃物で削って「手仕上げ」としている場合も多いようですので、機械彫りとあまり差がないと考えてもいいような気もします。
印章は手彫りと機械彫りで、工程も仕上がりも全く異なります。
みなさんが一番気にされる「複製」という点でも手彫りの印はほぼ不可能ですし、「写り」も手彫りと機械彫りじゃ全く違う。
また複製が気になる場合は、彫刻方法ではなく文字デザインの方がより重要になります。
手仕上げや機械彫りなど、フォントを使っている場合は量産も簡単です。
そのため印章製作において最も大切なことは「手書きの文字を使う」ことになりますが、そちらは書体についてに書いていきたいと思います。
一般にあまり馴染みのないはんこを彫る世界。
でも知っているだけで、違いは結構簡単に見分けがつきます。
機会があればぜひ一度、画像と見比べながらご覧いただければと思います。
最後になりますが、他店様で作られた印章が手彫りか機械彫りかのご相談は、遠慮させていただきますこと、ご了承ください。