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印鑑の彫り直し(改刻)は、材料にひびが入る可能性がありますのでご注意下さい。

以前にもブログに書きましたが、象牙や水牛や石は彫り直しができます。

なんですけど、店頭で多くの皆様からお聞きするのが、彫り直しをしてくれるお店は非常に少ないそうです。
対応できない、もしくはしない理由として考えられるのが、万が一のリスクの回避だと思われます。

一般的に彫り直しをご希望される方の多くは、せっかく材料が手元にあるなら新しく彫るより安いはずと考えられます。もちろんそれは間違いありません。

ただし、実は彫り直しの場合、彫り直しができる材料かできない材料かの目利きが命だったりもします。
これを見間違うと、せっかくお預かりして彫り直したにも関わらず、最終的にヒビが入って使い物にならなくなってしまう場合も多々ございます。
「えっ?あんなに硬いのに?」って思われるかもしれませんが、特に象牙に関してはこの現象が起こりやすいんです。
そのために店頭に目利きのできる方がいない場合、リスク回避のために受けないと思われます。

なのでそのあたりの謎を解き明かすべく、2013年2月13日に書いたブログですが2018年6月12日に大幅リライトし、彫り直しの工程と共にご紹介したいと思います。

 

彫り直しは切落とすのでなく、削り落とします

お客様の中には彫り直しの場合、彫刻面を切落とすと考えられる方も多いようです。
こんなイメージでしょうかね。

ノコギリのようなもので彫刻面を削り落とし、平らになった部分に新たに彫り直すとお考えの方が多いようです。
実際に私自身もこの仕事に携わる前はそう思っていましたし、みなさまからの疑問からもそれが伺えます。

  • 「全体的にどのくらい短くなるんですか?」
  • 「切り落とした部分だけいただけませんか?」
  • 「彫り直しって、首をハネるとかでよくないって言われたんですけど本当ですか?」

この辺りを総合すると、切落とすイメージの方が多いことが分かります。
まあ実際には、別に費用が掛かりますが、切落とす対応もできないことはありません。
とは言え、現実的な対応としまして時間も費用もかなり余計に掛かってしまいますから、鈴印でも基本的に切り落としはあまりオススメしておりません。

そして実際にどうしているのか?
これは動画が一番分かりやすいので、そちらをご覧ください。

削っているのが分かると思います。
そしてこの方法のメリットは、どこを切るか目測の切り落としに対して、彫刻されている断面が見えるため必要以上に削ってしまう心配がないのです。
材料の長さも無駄にせず、結果短くて押しにくさの軽減にも繋がります。

つまりお預かりした材料は様々メリットデメリットを懸案した結果、鈴印では切り落としているのではなく、削り落としています。

 

彫り直しの際に熱が加わって、ヒビが入る可能性があります

まず原因から申し上げますと、象牙などのカルシウム成分の天然材は、熱の影響で膨張収縮します。

そもそも骨などと同じカルシウムである象牙は水牛などのタンパク質に比べて、熱に強いのは人の骨などで実証済みです。
骨だけは燃えませんからね。ただし極端な高温だとヒビなどが入るのもなんとなく分かりますでしょうか。しかも歴史を重ねた骨ほど。
もちろん通常の気温の変化程度なら全く問題ないんですけど、古くて冷え切った状態から一気に熱が加わると一気に膨張します。
若くてキメの細かい牙なら柔軟性があって耐えられるんですが、印鑑の継承は100年以上前のものも多いですから比較的古い素材が多いんですね。
そうして熱が加わって膨張し、素材の荒かったり弱かったりした部分が、その分ひび割れを起こしてしまうんです。

では一気に熱が加わるメカニズムはこうです。
まず先ほどのように機械的に、印面を削り落とします。
かなり硬い素材でもある象牙を削りますからそれだけ負荷もかかり、実際にはかなり高温になります。触ると軽く熱を持つくらいなんです。

次にザラザラの削り面を平らにするために、サンドペーパーのようなもので番手を徐々に細かく何度も削ります。

そして平らになった後、彫っていきます。

そのあとは仕上げの工程で削り、捺印工程では押し、最後にバフで磨くなどと、印材にはその間ずっと熱が加わり続けます。
それぞれの熱量は僅かではあるんですが、積み重なっていくとそれだけ印材にダメージを与えていきます。
これが素材にヒビが入ってしまう原因なんです。

 

最後に

同じ象牙といっても天然材ですので、ピンからキリまで存在します。
鈴印で扱っている象牙に関しましては最高グレードのみしか扱っておりませんので、彫り直しも問題ございません。

ただし持ち込みの材料の場合、大きく2つに分かれる傾向がございます。
中国からのお土産等や、安かったものは、状態が良くない場合が多い。
形見として継承されるのは、良い場合が多い。
あくまで傾向ですけれど、参考になればと思います。

そして彫り直しは、例えば象牙や水牛なら全て対応可能ではなく、これまで書いたように状態によってお受けできる場合とできない場合に分かれます。
あまり状態が良くない場合ですとこれまで書いたようにヒビ割れてしまう可能性が非常に高く、その場合は誠に勝手ながらお断りしております。

最後に誤解のないように書いておきますが、鈴印としては基本的に彫り直しは歓迎です。むしろ良い材料であれば都度彫り直して継承し続けるべきだと考えます。
印鑑は大切なもの。
印鑑は自分の分身。
昔の人ほどそういって大切にされました。
素材も多くありましたから、良いものは本当に質が高いものが多いんですね。
だからそういった想いと一緒に引き継いでいくべきだと思っています。

ヒビが入ってしまってはそれらの想い対しても失礼だと思います。
また新規で実印登録もヒビが入った状態では受け付けてもらえません。
そのため私たちはご依頼を受ける段階からしっかり見極めていき、また途中で分かった段階でもその時点で一度ご連絡差し上げております。

いずれにしてもご検討されましたら彫り直しだけは、ぜひ専門店に足を運んでください。
専門店は、経験の数と対応の幅が段違いですから。

 

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