ハンコは契約の際、自分の意思を示すために使います。
だからこそ知っているのと知らないのとじゃ、いざという時に大違い。
完全に記憶しておく必要はないですけど、なんとなく頭の片隅にあればいい。
本日はそんな雑学を。
2017年3月25日に公開したブログですが、弁護士さんにご指摘をいただき、また逆にわかりにくくなったとのご指摘をいただきましたので、2020年4月6日に3度目のリライトをしました。
Q.印鑑が逆さまに押してる契約書は有効?それとも無効になっちゃう?
まず結論から申し上げましょう。
Q.印鑑が逆さまに押してる契約書は有効?それとも無効になっちゃう?
A.契約書は有効で、無効にはなりません
印を捺してあるかどうかに意味があって、印の角度にはなんの意味もないからです。
それにはなぜ契約書に捺印するか?の意味を理解する必要がありますね。
ちなみに契約書に押す印の意味は、甲(確認者)と乙(制作者)とで異なります。
- 甲)この文書の内容に誤りはありません
- 乙)この文書は私が作成しました
要するに契約書とは「乙)私が作りましたよ」&「甲)私はあなたが作った内容を認めましたよ」の相互確認です。
そして認めた印(しるし)として印(いん)を捺します。
印を捺す具体的な理由は、肝心な名前部分が誰でも作れる印刷物だったり、ゴム印を押しただけだったり、つまり記名しただけだったら、誰でも複製できちゃいますよね?
だから偽造できないように唯一無二の印鑑を押して、お互いに自分の意思であることを証明するわけです。
特に重要な契約では実印を捺し、さらに印鑑証明書を添付すれば、その完全性がさらに高まると。
ここで「100円で誰でも買える印に何の意味があるの?」なんてツッコミが入りそうですが、私たちとしては「だからこそ実印はちゃんと作ったものを」とお伝えしていますし、逆にこの仕組みを知っていると怖くて三文判を登録印には使えないことが分かりますね。
ここまでをまとめますと、印章の役割は契約書への意思の証明ですから、それが上を向いていようが下を向いていようが、契約書を作るという意味ではなんの問題もないことが分かります。
ちなみに意図的に逆さまに押すことも、場合によってはあるようです。
なかなか深いです。
重要なのは押す向きではなく、押す印鑑
氏名が記名(手書きではなく印刷など)の書類でも、印鑑が捺印されていれば当然有効になります。
ちなみに法的に証拠能力が最も強いのは以下の1。
【上記を弁護士さんからのご指摘で訂正】
ちなみに法的に証拠価値としては、1.2.3.は同じ。
228条4項は、「本人の署名」又は「本人の押印」どちらかがあれば適用されるので、1.2.3.は条文上同じ証拠価値ですが、直筆かどうかは筆跡鑑定等が必要にも関わらず、それ自体立証が非常に難しいことから、裁判では実印が押してあるかどうかが最も重要で、手書きと記名はほとんど差がない。
つまり直筆かどうかよりも、実印が押してあるかどうかが大きな決め手となっています。
- 署名捺印(手書き+印鑑)
- 署名のみ(手書き)
- 記名押印(印刷+印鑑)
- 記名のみ(印刷)※正式な効力は認められない
1と2は、署名があります。
怖いのは3ですね。
冒頭の契約書のように、相手が気を利かせたようなふりをして、名前が印刷されていたりゴム印が押してあるだけの契約書。
ここに三文判などの大量生産の既製印を押した場合、有効になってしまいます。
これが印鑑証明書を必要とするような重要書類の場合でも、一度上記のような契約を交わして印鑑が簡単に手に入ることがわかれば、新たに違う内容の書き換えることだって原理的には可能となってしまいます。
そのため上下が合っているかどうかを確認するよりも、その印が既製品なのか?作ったものなのか?を確認する方が大切です。
我々専門店からすると製法によって偽造が困難かどうかもありますが、長くなりますので今回は割愛致します。
最後に
日本において長年採用されている印鑑を利用した契約。
一見面倒にも思える印鑑ですが、手作りによって非常に簡単に、かつ確かなセキュリティが担保されるアイテムでもあったのです。
また何より最強なのは、アナログであることではないでしょうか。
外部のシステムに依存せず、自分の手元に置いておける安心感は便利な世の中であればあるほど、変えがたい価値があります。
契約の印鑑を押す際、上下を気にする必要がないことが分かりました。
それでも私は、真っ直ぐに押すことをオススメします。
なぜなら相手が人だからです。
逆さまで契約に対して適当と思われるよりも、真っ直ぐに真摯に向き合っている意思が表れるからです。
それを知ってか知らずか、昔仲の良い友人に婚姻届の保証人を頼まれた時、こんな言葉を添えて見事に真っ直ぐに捺印された実印がありました。
「やっぱ自分の決意だからさ、真っ直ぐに押さないと」
契約上の角度に意味はないですが、自分の決意には角度がある気がしますよね。
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